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DNA

 本書はDNAの二重螺旋構造発見50周年を記念して刊行された。近代遺伝学の誕生から、ヒトゲノム計画、遺伝子治療遺伝子組み換え作物の問題など、現代生物科学の抱える諸問題を網羅した書と言える。この本の著者であるJames D. WatsonはそのDNA二重螺旋構造の発見者であり、ヒトゲノム計画にも携わるなど、分子生物学の発展をその最前線で経験してきた人であり、この書を著すには最適であろう。

 彼と共同研究者のクリックが二重螺旋構造に至るまでの道筋は、非常にexcitingである。分子生物学の創世記に、その主役を担った人々の多くが、物理学者であっと言う記述も面白い。彼らの多くが(Watoson & Crickも含め)、波動力学で知られるシュレーディンガー(私も大学で波動方程式や井戸型ポテンシャルについて学んだ)の著書「生命とは何か」を読んで、生物学の道に進んだと言う。

 WatsonがRNAの暗号解読のために結成したRNAタイ・クラブのメンバーの中に、物理学者のリチャード・ファインマンの名前があったり、当時の活況が伺われる。

 遺伝学と言うと、誰しも思い起こすのは優生思想に名を借りた、ナチスドイツによるユダヤ人や精神薄弱者に対する強制断種であろう。しかし、この本を読んで驚かされたのは、こういった優生学に基づく断種がナチスに先行する形でアメリカ国内で行われていたという事実だ。もっとも、米国で行われていたのは、去勢手術で、ガス室を作っていたという訳ではないが。

 分子生物学の50年余という短い歴史を総括しながら、Watsonの一貫した主張は少なくとも人類への貢献がある限り、政治や宗教による介入によって、科学の発展が妨げられてはならない、という物である。

 非常に勉強になりました。

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